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東京地方裁判所 昭和30年(ソ)43号 決定

抗告人 塩谷俊昭

右代理人 金綱正已

〈外一名〉

相手方 有限会社名盤社

右代表者 牛腸澄子

主文

原決定を取消す

本件を東京簡易裁判所に差戻す。

理由

本件抗告の要旨は、抗告人は抗告人相手方間の東京簡易裁判所昭和三〇年(ハ)第一三〇号売掛代金請求事件の被告であるが、東京地方裁判所にはこれより先に被告の右事件における抗弁事由を請求原因とする同一当事者間の関連訴訟が二件係属しているので、右事件を東京地方裁判所に移送されたい旨の申立をしたところ、原裁判所はこれを却下した。右の却下決定は民訴三一条及び三一条の二に違反するものであるから、これが取消を求めるというのである。

相手方が抗告人を被告として東京簡易裁判所に前記売買代金請求の訴を提起する以前に抗告人が相手方を被告として当庁に権利金返還請求の訴(当庁昭和三〇年(ワ)第七九五号)及び請求異議の訴(当庁昭和三〇年(ワ)第三四二〇号)を提起し、現に当庁において審理中であること、当庁に係属中の右の二つの事件の請求原因事実が前記売買代金請求事件における抗告人の抗弁事由と全く同一のものであることは関係記録に徴し明瞭である。こうした場合に当事者から移送の申立があつたときは、判断の抵触を避ける意味からいつても、訴訟経済をはかる意味からいつても当庁に事件を移達するのが相当であると考える。民訴三一条の二にいわゆる相当なりや否やは客観的な規準によつて判断すべきものであつて、原審のいうように「相当なりや否やは裁判所の自由なる裁量によつて定むる他の干渉を許さない」となすべきものではない。この点において本件抗告は理由があるので、主文のとおり決定する。

(裁判官 石井良三)

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